室内で用いられた移動可能な屏障具。 四角形の木の台座(=土居・つちい)の上に 二本の細い丸柱(=足)を立て、 T字に横木(=手)を渡して 布(=帳子・かたびら)を掛けたもの。 |
| 表 |
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| 裏 |
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T字形の棹は黒漆塗で、土居から横木までの高さによって、三尺几帳,四尺 几帳の別があります。 三尺几帳には四幅(よの)、四尺には五幅(いつの)帷子をそれぞれ垂らしま す。 幅を縫い合わせる際には、上の写真でもご覧いただけますように、上から下 まで隙間なく縫い合わせてしまうことをせず、途中を少しずつあけておきます。 この隙間を几帳のほころびといい、垣間見に利用されたりしました。 帷子には 一幅ごとに野筋(のすじ)という紐がついており、裏で 輪になって 折り返されたものが 表では二条になって 帷子よりも長く垂れ下がっていま す。この野筋は見た目の良さだけでなく、必要に応じて帷子を巻き上げて結ぶ という実際の用途でも 役立つものでした。 |

| 左 | 右 |
| 五幅の帷子を垂らした四尺几帳 | 四幅の帷子を垂らした三尺几帳 |

寝殿造では間仕切壁がほとんどないために、御簾(みす)・壁代(かべしろ)・ 軟障(ぜじょう)など さまざまな屏障具を用いることで、広い空間を もっと 使い勝手のよい 小さなスペースに間仕切っていました。もちろん、これらの 屏障具のおかげで、外部からは室内が覗きこめないような仕組みになって いたわけですが、そのさらに内側に立てられたのが几帳でした。 具体的には、御簾の下に四尺几帳を、身の周りには三尺几帳をそれぞれ 立て、外部からの視線をブロックしていたわけです。 また、外部との遮断のためだけでなく、移動可能な屏障具として、臨時の間 仕切り等にも 几帳は気軽に用いられていたようです。 源氏物語中、「几帳」の用例は実に107を数えます。 この数字は、当時の人たちにとって 几帳が生活に欠かせない非常に身近 なものであった ということを表していると同時に、几帳が物語の小道具とし て 大変有用であった ということをも意味しているのではないでしょうか。 つまり、物語の場面において、どのような几帳が使われているかを書くこと によって、その場の格式の高さや 使い手のセンスなど、さまざまな情報を 読者にさりげなく伝えることをも可能にする力が 几帳にはあったのだろう ということです。 季節や行事に応じて 色目や模様などをその場に相応しいものに変えてい く必要のあった几帳は、衣裳がまさにそうであったように、それを使う人間 の趣味の善し悪し、換言すれば 人格や家格までをも映し出してしまう 室 内屏障具として用いられていたのでしょう。 |
| 参考(2004年後期の展示より) | |
| 羅(ら)の几帳 | |
| 花橘(表朽葉・裏青)の重ね | 移菊(表紫・裏黄)の重ね |
| 浅縹の裾濃 | 紫苑(表紫・裏蘇芳) |
| 橘(表濃朽葉・裏黄)の重ね | 濃朽葉の裾濃 |
| 黄紅葉(表黄・裏濃黄)か 残菊(表黄・裏白) |
藤袴(表紫・裏紫)か 萩重ね(表紫・裏二藍) |
| 玉鬘が隠れている几帳 | 源氏の周囲にある几帳 |
| 几帳 雑学 |
私は文字登録の仕方を知らなかった頃、PCで「几帳」という字を出す ためには、「几帳面」と入力した後で「面」の字だけをカットしていたの ですが、まさにその「几帳面」の語源が この「几帳」なのだそうです。 「大辞林」には、 |
1(形動)[文]ナリ きちんとしているさま。すみずみまで規則正しくするさま。 「―な性格」 2(名) 柱などの角に施した面の一。方形の角を落として鋭角に削り、その両 側に刻みを入れたもの。もと几帳の柱に用いられたことからいう。 |
とありますが、この几帳の柱の角を落として面取りをするという作業 には とりわけ正確な技術が必要であったことから、丁寧できちんと したさまを指して「几帳面」というようになったのだそうです。 |