寝殿北廂 紫の上と梅壺中宮の春秋優劣論『乙女』巻より

レポート by 明さん



秋という季節感は、女性達の衣裳の代わりに几帳の帷子が担
当しているようです。

左手の2人の女房の奥に置かれた几帳の重ねは、紫苑(表紫
・裏蘇芳)であることが見て取れます。




また、裏がわからないので確かなことは言えませんが、右手の
2人の女房の手前に置かれた几帳の表は濃朽葉の裾濃で秋
らしい色彩になっていますし、



奥に置かれた几帳の表は紫で、色目は藤袴(表紫・裏紫)か
萩重ね(表紫・裏二藍)が想像されます。



紫の上の後ろに置いてある几帳の色目は、表が黄色である点
からいくと黄紅葉(表黄・裏濃黄)か、それとも残菊(表黄・裏白)
でしょうか?



左手の女房の背後の障子の向こう、寝殿東廂にもこれとお揃
いの帷子と思われる几帳が置かれています。



今回の展示では、寝殿西廂の蛍巻の箇所に限らず全般にと
ても精緻で綺麗な几帳が沢山使われていますので、どうぞお
見逃しのないようによくご覧くださいね!


因みに、この場面で中宮から詠みかけられた春秋優劣論は、
このやり取りを傍らで見ていた源氏が

この紅葉の御消息、いとねたげなめり。春の花盛りに、
この御応へは聞こえたまへ。このころ紅葉を言ひ朽さむ
は、龍田姫の思はむこともあるを、さし退きて、花の蔭に
立ち隠れてこそ、強きことは出で来め


つまり「秋の美しさが眼前に広がっている今は不利だから、
春の花盛りにお返事を差し上げなさい」と薦めた言葉どおり、
翌年春の桜の花盛りに催された中宮主催の季の御読経に
おいて紫の上が爛漫の春を賞美する歌を贈り、最終的に春
の勝利となるのでした。

風俗博物館での季の御読経の展示はこちらでご覧いただけ
ますので、ご参考までにどうぞ。

以上、寝殿北廂の展示でした。

東の対北廂・東廂北側へつづく

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